Blog:Neutron Star

tma1のブログ 「試行錯誤」・・・私の好きな言葉です

地獄少女 二籠


第19話 「あのひとの記録」。こういう、人の行動の意味について色々に解釈できる謎の残る話は好きです。あのオハジキを何故大事に持っていたのか?彼女と彼の間には最後の瞬間に暗黙の合意があったように思えたけど本当はどうだったのか?何故あの結末は避けられなかったのか?そもそも、あとで許せなくなるようなことを夫に勧めた妻の意図が「試し」だったとしたら、なんとも理不尽な・・・。


他人の行動の意味はもちろん自分が見た目で判断するしかありませんが、自分のしていることだって果たしてはっきりと意味を分かってやっていることばかりでしょうか?


世の中に溢れている小説や物語の中には登場人物の行動の意味が明快に言葉で説明されているものがあって、そういうものを読んでいる間、世の中はなんと論理的で分かりやすいものか、人というものもなんと理解しやすいのだろう・・・と思うんですが・・・。


さて自分の日々の行動を思い返すと、意味のはっきりしている行動、たとえば損得勘定や価値判断に基づいた説明のしやすい行動もありますが、好悪というか好き嫌いに基づく行動は自分でも言葉では説明しにくい面があります。これが本能ってやつでしょうか(^^;)


NHKの生き物関係のドキュメンタリーやTBSの動物クイズバラエティ番組などを見てると動物の一見不可思議な行動の意味を種の保存の戦略として解説するものが時々あって、なるほどと感心することがあるんですが・・・はたして彼らの中で本当に種の保存を意識して行動しているものがいるんでしょうか?


はっきり言って、全くいないと思います。それこそ本能の命じるままというやつでそのような遠大な目的を理解してそのために行動している動物などいないはずです。こういう解説は動物行動学の研究者の学説をそのまま引用していていわゆる「解釈」というやつです。


例えば、ヌーの大移動で多くの犠牲が出るのは増えすぎて種そのものが絶滅しないように自ら数を減らしているのだ・・・って、なるほど・・・だけじゃ済まないと思うんですけど。


民俗学では通過儀礼と呼ばれる儀式や慣習が人間の中にあって成人式なんてのはその名残でしょうが、民族によっては生死を賭けた危険なものだったりします。これも種の保存と言う観点から解釈するなら、弱者を篩い(ふるい)にかけて優勢な遺伝子を残そうとする行為ということになるでしょう。


男女の異性を魅きつけたいとする行動、ファッションや言動、社会的地位や財力を求める欲求などもそれに還元して解釈することも可能です。特定の異性を好ましく思う好悪の感情もそのように解釈することも可能なんですが、好きな子を前にしてバックンバックン言ってる心臓が種の保存のためだなんて考えてる奴はひとりもいないでしょう(笑)


それゆえ歴史家の記述は外に現れた行動を解釈するものであって単純明快で良いでしょうが、小説家のそれは時に意味不明であった方が奥が深くて良いと思うわけです。


追記:書き忘れに気が付きました。そもそも種の保存が・・・というフレーズを思いついたのが、この夫婦、妻が原因で子供ができないという問題を解決するのに養子ではなく夫の精子代理母を使ったこと。何故、自分の遺伝子にこだわるんでしょうねぇ。これも本能でしょうか?何らかの理由で親のいない孤児を引き取る方が合理的だとは思いますが。しかし他人の子供を心底から愛せるというできた人間も少ないかも知れません。それが不安で・・・というなら、自分というものについて正直な人なのだというべきかもしれませんね。(2007/03/15)