Blog:Neutron Star

tma1のブログ 「試行錯誤」・・・私の好きな言葉です

ハーモニー

これは個人的には面白かったです。脳内の欲求と報酬、選択と葛藤。大脳生理学と結びついた経済学がありますが、倫理観、いわゆる善悪の淵源はそこにあると思いますし。


意識の消失は「いわゆる無意識」とは違う。「いわゆる無意識」は意識と対比させたときにのみ規定されるものなので。「いわゆる無意識」とは違う意識のない状態、選択や葛藤がなくすべての行動が自明だという・・・

追記
「意識」が生じる前の状態は本能に従って生きる状態だったのかもしれない。生存欲求、繁殖欲求などさまざまな欲求をを満たすための身体の機能とその身体の動かし方を生来持っており、それを「本能」と呼ぶが、本能に従って生きる状態から自分にとっての有利/不利、社会(他者との共存。自己を意識することは他者を自己と分別することであるがゆえに)にとっての善/悪を忖度し葛藤する状態への移行はもしかしたら息苦しいことなのかもしれない。


それは善悪を知る知恵の実を食べてしまい楽園を追放されたアダムとイヴの悲しみであったかもしれない。


以前から、古代人や未開人において自己を表す一人称の単語の発生は自意識の芽生えの結果であり、それ以前には神あるいは集合無意識と対話できていたのではないか?「われ」を意識することで神を見失い神と隔絶したのではないか?と、原典は何であったか忘れましたが(エリアーデかも)、原始、人は神と対話していた、という記述からの妄想ですが、この「ハーモニー」は発想が同じだなと感じました。


これは「PSYCHOPASS 2」の色相に濁りのない犯罪者と共通する状態なのではないかと思いました。色相の濁りは葛藤から生じるのでしょう。善悪の区別があり、そのどちらを選んで行動するのかの判断こそが倫理的葛藤だと思いますが、その葛藤がなければ色相に濁りは生じない。


人間社会では間違いなく悪とみなされる殺人を葛藤も躊躇もなく行う人間がいるとしたら、それは・・・


この作品の中では秘境の少数民族出身の少女が、意識のない状態が普通であるという特殊な存在で、外界と隔絶された部族内での近親交配の結果の器質的な変成かそれとも元々そういう形質を遺伝する種族が隠れ住んでいたのか分かりませんが、未成年で某国軍隊に拉致されて回春施設に入れられていわゆる従軍慰安婦に強制的にさせられて・・・虐待の結果、意識のようなものが生じたけれど、やがて全人類を巻き込んで意識消失の状態に回帰することを望むというお話。


最近、裁判で話題のタリウム女子大生などは、もしかするとそれに近いのかもしれませんねぇ・・・善悪の彼岸にある存在・・・と言って良いのか分かりませんが・・・


個人的にはそういう存在は人を襲う肉食獣と同じで、彼らにも人を襲う際には善悪の葛藤など無いだろうし、彼らの捕食や防衛、攻撃行動に伴う人間の殺害を悪として裁くことはナンセンスだと思いますが、人間と共存は難しいので少なくとも社会から排除すべきだとは個人的に思います。


今日、面白いことに正義感は乳児の頃から生じるとかいう研究の話題がネット上にありました。詳細は分かりませんが、「実験は乳児に攻撃者、犠牲者、それを止める(止めない)第三者の動画を見せた後、第三者の実物を示し、選択をさせるというもの」で攻撃されている弱者を助ける行動をする第三者の行為をポジティブに評価するとかいうもので・・・個人的には「正義感」とか「正義」の定義に疑問を感じますが面白い。


「ハーモニー」キャラクターの絵に関しては必ずしも好みとは言えませんでしたが、ラストの方、この世ならぬ風景の絵など気に入りましたし、途中のペルシャ絨毯がたくさん干されているシーンは良かったと思います。


ただ、プロローグとエピローグの意味が分からないんですよね、実は(^^;)原作を読むべきなのかな。

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

その他、「魍魎の匣」、「月の塔」事件などに通じるものがあるように感じました。