Blog:Neutron Star

tma1のブログ 「試行錯誤」・・・私の好きな言葉です

DPF-7002 MEMO 3


独学のためのメモですから(^^;)読み飛ばしてください。

オペアンプの応答特性


そもそも良く考えてみればオペアンプの出力である電圧にオペアンプの個性の違いが出るというのが不思議といえば不思議ですが、DPF-7002 MEMO 2(http://d.hatena.ne.jp/tma1/20070108#p2)でも書いたように8fs=352.8kHzのパルス電流は1サイクルたったの2.8μsですからセトリングタイムがその半分以内に収まっていないOPA2604(1.5μs)なんかだとその出力はきっとかなり誤差を含んでいるんじゃないかと。スルーレートもセトリングタイムもそれ以下であろうNE5532やNJM4580などでは絶対20bit 8fsに見合う出力ではなかっただろうと思います。


もともとCDの音声データは標準信号出力レベル(約6V)の範囲の電圧変化を44.1kHz 22μsの時間ごとに16bit解像度65536段階の数値に置き換えたものですが、DAC PCM1702の出力は20bit 8fsですから352.8kHz 2.8μs毎に1048576段階のパルス電流出力です。


ちなみに20bitではダイナミックレンジの理論値は120dBらしいです。



ダイナミックレンジの理論値

16bitでは96dB
20bitでは120dB
22bitでは132dB
24bitでは144dB


スルーレートが低かったりセトリングタイムが長すぎれば本来の出力が再現できないはずです。車の運転をしない私が言うのもなんですが、スルーレートは車の加速性能、セトリングタイムは操縦性能みたいなものだと思えば(^^;)イメージ的には直角に曲がるL字クランクが連続するテストコースでどれだけ早くかつ正確にトレースできるかを競うようなものでしょうか。


なので最近はDACからのパルス電流に対する応答特性、スルーレートとセトリングタイム。それとノイズ(noise density)が良さそうな物(ただしビデオ用オペアンプは除く)をDPF-7002改に使いたいと思っています。


それで手持ちのオペアンプ含めて良さそうな物を比較してみると


セトリングタイム スルーレート オーディオバンド・ノイズ
OPA627 550ns 55V/μs※ 10nV
OPA2604 1.5μs 25V/μs 15nV
OPA2134 0.7μs 20V/μs 8nV※
AD823 350ns※ 22V/μs 16nV

でそれぞれの特性ごとに良い項目に※をつけました。意外とOPA2134が値段の割には(400円程度)良さそうな気がします。残念ながらOPA2134は持っていないんですが、「PCM1704の高性能化テクニック」(http://www.tij.co.jp/jsc/psheets/SBAA066.pdf)の中にI/V変換用候補として挙がっていたので。


それでもNE5532とかNJM4580でもそれなりに聞けたというのは、結局LPF回路で20kHz以上をカットしているからなんでしょうね。


ただカットといっても・・・スペクトラムアナライザのイメージで20kHzよりも右がバッサリというのは虚像ですね・・・音は空気の疎密波、振動ですから20kHz以上(実際は24kHz程度が境界)が無くなると言うのは振動が間引かれるような感じでしょうか。ただし、ここではLPF回路の仕組みで理解すべきなので・・・周波数とコンデンサの充放電にかかる時間、流れる電流を制御する抵抗の値によって波形の一部が再現されず傾きはゆるくなり振幅(出力電圧)も小さくなる・・・


カットオフ周波数

fc=1/2πCR

1μF、1kΩで159Hz


低いスルーレートオペアンプをI/V変換に使った場合もこれと同じことが生じているってことでしょうか?ということは、I/V変換のオペアンプはなおさら応答特性の良いものを使わないといけませんね。

VLSC


ONKYO SE-200PCIはLPF回路に相当する部分がVLSC回路になっているとのことですが、表面的に見えるのはオペアンプと抵抗とコンデンサのみで配線は多層基盤に隠されています。


VLSC(Vector Linear Shaping Circuitry)というのはONKYOの説明では



VLSCは比較器とベクトル発生器で構成され、比較器はD/Aコンバーター・チップの出力とベクトル発生器の出力とを常に比較し、その比較情報をベクトル発生器に伝達します。その情報はD/Aコンバーターの出力レベルの方が高いか低いか、そしてその差はどれくらいかというものです。ベクトル発生器はその情報に基づいて、高ければプラス(増加)方向に、低ければマイナス(減少)方向に、また、その差が大きければ増減の変化速度を速く、小さければゆっくりと、その情報に即したベクトルで出力レベルを変化させます。このように比較とそれに基づく信号の生成を連続して繰り返すことで、ノイズを含まない新たなアナログ波形を作り出します。


となっています。比較器というのはオペアンプでしょうか。ベクトル発生器というのが良くわかりませんが、積分回路らしいので要するにコンデンサと抵抗ですよね。DACからの出力をいったんI/V変換で電圧にしたものをバッファ(オペアンプ)に持っていて、それのLPFの出力をいったん戻して比較して負帰還のようにも利用しているってことでしょうか?


SE-200PCIやSE-150PCIのオペアンプを交換するのに躊躇するのは、この辺がブラックボックスになっているのでCRの定数を考えずにオペアンプだけ交換してしまっていいいものかどうか不明だというのが理由としてあります。I/V変換はともかくVLSC回路の一部になっているなら波形出力時にスルーレートの値なんかは定数のひとつになっているような気もするんですが・・・はて?


まだまだ素人には分からないことだらけです。


追加:特許電子図書館で「低域通過フィルタ」見つけました。全体的にはチンプンカンプンですが(^^;)、要点は分かったような気がします(2007/01/19)


追記:SE-200PCIなどVLSCの回路ではDACの出力は電圧でその後のオペアンプの役割は比較器と電圧電流変換(V/I変換)です。実際、SE-200PCIの2chDACであるWolfsonのWM8740は内部にLPFを含んでいて出力は電圧です。


だからといってセトリングタイムとスルーレートが低くてもオーバーサンプリング時に問題ないのか?というのは不明ですが。(2007/02/26)