Blog:Neutron Star

tma1のブログ 「試行錯誤」・・・私の好きな言葉です

ケーブルにアルミホイルを巻く


AV、通信関係のケーブルにアルミホイルを巻くと良い効果があるという話は聞いたことがあると思います。ネットで検索をかけてみると効果あり、無し色々です。またそれらを読んでみても、その作用が電磁波ノイズの遮断なのか吸収なのかそれとも反射なのかはっきり分かりません。あるいは制振だ、あるいはアースだいやアンテナだと十人十色です。


それらを読んでいつも疑問に思うのは、主観的な印象ばかりで客観的なデータが提示されてないことです。「激変」とか「やれば分かる」とか言われても・・・ねぇ。そんなことだからプラシーボとかオカルト、宗教とか言われるわけで。

準備


実際、少しでも違いがあるの?という興味を持ったら自分で試してみるしかありません。ちょうど私の部屋にはヘッドホンをつなぐためのミニジャック延長ケーブルの全く同じもの(audio-technica GATE LINK ATC-GL45A/1.5)が何本かあるので2本を使って比較してみることにしました。

http://www.audio-technica.co.jp/products/cables/gatelink/atc-gl45a.html

あいにくなことに?これには「外付けフェライトコアに匹敵する外来ノイズ低減効果(−6dB at 20MHz)を発揮」するというシールドが施されています。違いが出るとしたらもっと安物のケーブルの方が良さそうですが、しかたがありません。


KENWOOD DPF-7002(CDP) -> marantz PS5400(アンプ) ->(GATE LINK ATC-GL45A/1.5)-> Etymotic Research ER-4S(イヤホン)


のGATE LINK ATC-GL45A/1.5をアルミあり無しで交換して聞き比べます。


2本のうちの片方に100円ショップで買ったアルミホイル(三菱ホイル 厚さ15ミクロン)を適当に巻きつけました。重なっている部分でもきっと45ミクロン程度でしょう。こんなんでいいんかな?と自分でも首をかしげながら、試聴。

試聴


例のごとく、バーバラ・ヘンドリクス「黒人霊歌集」から。うーん、ひょっとしたら良いかも。息継ぎの時の唇と唾液の「チュ」という音やピアニストの身じろぎの時の椅子の「ギッ」という音がいつもよりも良く聞こえる気がします。アルミあり無しで聴き比べて少なくとも悪くなったという感じは受けません。どちらかといえば良いかな?


坂本真綾の「プラチナ」の2分45秒辺りから入るキーボード?の電子音がアルミありの方がやや外側手前に聞こえるような気がします。


宇宙の騎士テッカマンブレード」の「テックセッター!!」ではブラスのブリブリいう音の芯が太くなったような気がします。


アルミホイル、適当に巻いただけでも微妙によさげなので音楽を聴きながらER-4Sのケーブルの左右に分岐する手前まで巻きました。


どうやら音の違いは確かに出るようです。これなら以前のようにWave Spectraで見ても違いが分かるでしょう。ということで、ミニジャック−RCA変換ケーブルの安物(ノーブランド)がちょうど2本あるので、これの1本に同じようにアルミホイルを巻いてみました。


KENWOOD DPF-7002(CDP) -> marantz PS5400(アンプ) ->(ミニジャック−RCA変換ケーブル)-> TOSHIBA RD-XS33(HDDレコーダー)


のようにして今回はmarantz PS5400のヘッドホン出力をHDDレコーダーで録音することにしました。(PS5400のヘッドホンジャックは標準プラグ用なのでaudio-technicaの標準−ミニジャック変換コネクタを付けています)前回同様、HDDレコーダー側で画質最低、音質はL-PCM(リニアPCM 16bit 48kHz)に設定して録音(録画)してからDVD-RAMでPCに持って行き、VirutalDubModで音声ストリームをWAVEファイルとして保存。できたWAVEファイルをWave Spectraに読み込ませてピークの波形を比較しました。


ソースはハンス・オットー演奏 J.S.バッハトッカータとフーガ」のトッカータの部分。DENONの優秀録音盤です。

評価



赤:アルミあり、 青:アルミなし


全体を見てまず気づく特徴は10kHz近辺から上ではアルミありの方が+2.0dbほどピークが強く出ていることです。10kHz以下では音の大きな部分のピーク、音の小さな部分のピーク(谷)にズレのようなものがあるように見受けられます。ある周波数帯ではアルミ無しの方が大きく別の周波数帯ではアルミありの方が大きいということでしょうか。ちょっと目に付いた箇所のリードアウトです。

「   70.3Hz アルミあり:−21.1db、アルミなし:-20.5db」 (-0.6db)
「  164.1Hz アルミあり:−17.2db、アルミなし:-16.7db」 (-0.5db)
「  445.3Hz アルミあり:−28.6db、アルミなし:-27.4db」 (-1.2db)
「 1007.8Hz アルミあり:−24.6db、アルミなし:-24.8db」 (+0.2db)
「 3281.3Hz アルミあり:−49.0db、アルミなし:-46.7db」 (-2.3db)
「10031.3Hz アルミあり:−61.2db、アルミなし:-63.3db」 (+2.1db)
「14015.6Hz アルミあり:−65.8db、アルミなし:-67.8db」 (+2.0db)
「19734.4Hz アルミあり:−68.6db、アルミなし:-69.2db」 (+0.6db)


適当なサンプリングなのであまり意味が無いかもしれませんが、アンプの出力ケーブルにアルミホイルを巻くと高音域の出力がちょっと(数db)底上げされる感じではないか?と思います。


ちなみに音全体のピークが静的で見やすいので全体のピークで比較してますが、本当は個々の楽器の音に注目して矩形波などを動的に比較するべきなんでしょうが・・・現状では私には難しいです。


アルミホイルは厚い方がより影響が大きくなるのでしょうか?さらに巻いて試してみたいものですが・・・さて?

補足


それなりに違いが出ることは分かりましたが、これがアルミホイルのどんな作用によるものなのか私には見当もつきません(^^;)ただ、ちゃんと絶縁されたケーブルの外側を覆うだけでアースもつなげていないのですから、導電体として機能してはいないのではないか?機能していてもごく僅かではないか?と思うんですが。


参考までに・・・


アルミ(アルミニウム)は空気にふれると表面に酸化膜を作るらしいです。自然にできた酸化膜によりアルミは微弱な電気は流しにくくなっていますが、電波を受けるとアルミの酸化膜が破れて電気を流すようになります。大人の科学の「マルコーニ式電波カー」はこれを受信機(検波器(コヒーラ))として利用しているようです。

http://shop.gakken.co.jp/otonanokagaku/vol02.html


また、録画しておいた教育テレビの高校講座・物理でちょうど同じ実験をやっていました。チャッカマン風電子式ライタをアルミホイルを巻いたL字棒で挟んで半波長ダイポールアンテナ式の線アンテナを作って、アルミホイルを丸めた玉をカップに入れて電極をつないだスイッチにしてました。


もしかしたらアルミの酸化膜が電磁波を吸収する働きをしているのではないかと思うんですが、それで高音域が底上げされる説明になるのか?と問われると・・・私には今のところ解りません(^^;)専門家の意見を聞きたいところです。

蛇足


某BBSでかなりの人数でブラインドテストをした結果、数十万円のスピーカーケーブルがアルミ箔&銅箔を巻いた数千円のスピーカーケーブルに劣ると判定されたという書き込みを見かけたのですが・・・うーん。確かに違いがあるとして、本当に良い音なんでしょうか?ER-4Sにもアルミを巻いてしまった私ですが、良い音なのかどうなのかというのはまだ断言できません。


もしかして電気工学的あるいは音響工学的にはアルミを巻かない状態のほうが良いのではないか?実は余計な味付けなのではないか?という疑問はあるわけです。CDなどに録音された音をよりピュアに再生する目的で作られた高額なケーブルでは音がおとなしく聞こえ、高域が持ち上げられたはったりの効いた音の方が一般人の好みに合致しただけではないのか?


惜しいと思うのは、そのブラインドテストには「専門家」が含まれていなかったことです。メーカーの人間でも良いのですが「専門家」や「技術者」の視点というのが欠けているのが残念です。