さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)
- 作者: 山田真哉
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2005/02/16
- メディア: 新書
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これも「バカの壁」と同じく、題名に魅力があって勘違いした人が手に取る類のベストセラーです。
私も「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の一句を目にして、興味を惹かれて読んだものです。図書館で借りたのですが、請求を出したときには100人以上のリクエストがスタックされてました。この状況は「バカの壁」と同じでした。
で、読んでみたら・・・もう、がっかり。この本は別に「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」を真面目に研究調査した本ではないし、会計学から見てマジックとも思える妙手を発見、解説した本でもありません。
著者は「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」という興味を持ったものの、実際に調べて本書内に引用したのは・・・
1.安い物干し竿を売ると見せかけて、より高い物干し台を法外な値段で売りつけたり、家屋に問題があるなどとおためごかしに知り合いのリフォーム業者を紹介してマージンを取る悪徳業者が摘発されたという新聞記事
2.たまたま見かけた猛スピードで突っ走るサオダケ屋の本業が金物屋など店舗を構える業者が店の在庫を売っているもので売れても売れなくても構わないという・・・ひとりのサオダケ屋さんから聞いた話
この2点だけで、「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の答えとしています。
ところが、今度「さおだけ屋」が主人公の映画が作られるという話があってネット上のニュース記事によれば実際に仕入れが売値よりもかなり安くて実は良い商売だった・・・という話がありました。
まぁ、これがすべてでは無いでしょうし、その景気のいい話はバブル期だけの話だったのかも知れませんが、そういう風に実地に調べればこの本に書かれたつまらない理由よりも役に立つ、興味深い理由が分かったはずです。それをこの著者はやらずに安楽椅子探偵よろしく推測だけで本を一冊でっち上げてるわけです。
もう一例、あげるなら・・・住宅地の謎の高級フランス料理店。これもどう見ても客が入っているようには見えない。中に入って実際に食事をしてみると良い店だしリーズナブルな値段ではあるが、常連客が多いとも見えない。主婦らしき女性客が何人かソムリエやシェフと親しげに話をしているが、それだけでやっていけるとは思えない・・・しかし、トイレに行ってその謎が分かったというのです。
料理教室とソムリエ教室の貼り紙。これだ!と思ったそうです。月謝と入会金。教室は営業時間外にやれば良いのだから店がそのまま教室として使えてコストもかからない。それが答えだというわけです。
いや、そう思ってもですよ、どうせそこにいたなら話を実際に聞いて確かめてくれないと・・・。
この著者はこんな風にすべて安楽椅子探偵のように何もせずに推理だけで答えを出しているわけです。
この本の実際の価値は、題名の後半の「身近な疑問からはじめる会計学」の方にあって会計学の用語などを分かりやすく解説してます。
だから著者は「身近な疑問」の答えには重きは置いていなくて、会計学の初心者向けの解説をさらさらっと書いたつもりなんでしょう。
しかし、推測だけで物を言う人からは、何も教わりたくないな・・・と思うわけです(^^;)
何の苦労も無くさらさらっと思い付きを書いただけの本がベストセラーになってしまうんですから、なんだか腹が立ちます。まぁ、100%やっかみですけど(^^;)