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tma1のブログ 「試行錯誤」・・・私の好きな言葉です

ライトスタッフ

ライトスタッフ スペシャル・エディション [DVD]

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航空・宇宙分野に関して「人類初」という最先端に命を懸けた男たちとそれを支えた女たち。

音速の壁を越える、成層圏の外に出る、地球の周りを回る。アメリカという国に限って言えば、宇宙に出るのはソビエトにやや遅れましたが、ソビエトガガーリンライトスタッフ(正しい資質)を持つものに加えていけないわけがありましょうか。ライトスタッフ(正しい資質)とは勇気とも才能ともちょっと違う、この世には命をかけるに値するものがあることを知る者(LOTRのサム・ワイズみたいに)とすれば、ユーリ・ガガーリンも間違いなくそのひとり。


画面上の主役は音速の壁を越えたチャック・イェーガーに始まり、アメリカが宇宙開発競争(狂騒)に本腰を入れてからはマーキュリー計画の7人のパイロットに移った感はありましたが、英雄に祭り上げられたものたちに群がり翻弄する醜い欲望と併走するように鉛筆のようなシェイプの新鋭ジェット機F-104に乗り相も変らぬ安月給でしかも予定にも無いフライトで高々度記録に挑戦するチャック・イェーガーのカッコ良さを描いた作り手の心意気が心地よいのです。


マーキュリー計画パイロットのひとりでいつも「俺がベストパイロット」とおどけるゴードン・クーパーが、つかの間真摯な気持ちで「この空の下、今もどこかで挑戦し続けている」ライトスタッフのひとりで、これまでに会ったベストは誰か、内心を吐露しかけるシチュエーションこそが、この映画の良心。


さて、製作時はCGが未発達で現在の感覚で言えば特撮部分には限界を感じますが、それをつまらないと思わせないセンスの良さがあります。


演出としては、コミカルかつ官能的で決してドキュメンタリーのような淡々とした描き方ではありません。冒頭、チャック・イェーガーとその夫人が馬に乗って夕空の下で追いかけっこするシーンの両者の弾む息、馬の躍動は実に官能的。天候不順のため発射体制のままカプセル(スペースクラフトというべきか)のなかで待機し尿意を抑えるアラン・シェパードに被せる気の利いたモンタージュの数々。カップからあふれるコーヒー、給水器のタンク内にゴボッとうごめく気泡などなど。当時はサブリミナルの効果も信じられていた頃でしょう、肉体の感覚に訴える暗示的な演出が前面に出ていて、現在見ると逆に新鮮かも。


ストラトス・フォー」のサントラが「ライトスタッフ」を見直すきっかけになったわけですが、やっぱりホルストの「惑星」のアレンジがそうでした。「ストラトス・フォー」ではTrack 7の「試練」。これはチャック・イェーガーのベルX-1の発進シーンに最適。確かにビル・コンティのより天野正道の方がカッコイイ!

ストラトス・フォー(1) [DVD]

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F-104 スターファイターといえば、私の叔父が空自にいて乗ったことがあるそうですが、エンジンそのものにまたがってるような感じでトラブルも多くて乗るのが怖かったそうです。

http://www.jaa-net.gr.jp/aircraft/f-104.htm