Blog:Neutron Star

tma1のブログ 「試行錯誤」・・・私の好きな言葉です

文藝春秋 2015年9月号

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芥川賞作品が載ってるやつです。ぶっちゃけ又吉の「火花」より羽田圭介スクラップアンドビルド」の方が個人的には面白かったし老人介護というネタも共感できました。


普段は杖を使っているのにイザという時には杖なしに高速移動する珍獣のような爺ちゃんとか、病院の「殺してくれっ!」「もう少し待っててねぇ」「はぁい」の老婆と看護師のやり取りも面白かった。


基本、老人の「死にたい」は真に受けちゃいけないんですよねw


あらすじだったか選評だったかで主人公、健斗が体を鍛えるのは介護に役立つからみたいなことが書かれてましたが全然違いましたね。あれは精神も身体も含めて色々な意味で脆弱だと健斗の目から見た情けない祖父と、筋肉を傷めつける鍛錬と超回復、就職に役立つ資格の勉強と中途採用の面接挑戦、そして複数回の性交渉に耐える精力wと十分に戦える30代の自分とを対比して安心するためにやってることでした。


でも、長いスパンで見ると祖父も健斗も同じだということを、祖父が戦中に健斗と同じハードな肉体鍛錬をしていたことで伺わせているんですよね。トレーニング中に親指の付け根を痛めて、数日トレーニングを避けたのは普通に考えれば至極マトモなんですけど、結局は些細な痛みから逃れ続ける祖父と同じで、老いて弱るということは些細な苦痛に耐えられなくなるということの積み重ねだと思うんですよね。作者もそれを見せたかったのだと思います。


さすが若手とはいえ長年職業作家をしているこの作者の作品は上手いと思います。


それに引き換え又吉「火花」は・・・うーん、私はこれが芥川賞というのにはすこぶる疑問。個人的にはまず言葉遣いに引っかかってしまいました。話し言葉の延長であろう(と私には思える)私小説で「後方」という言葉を使うのは生硬というもの。


それに所々の独自の感性の表現、と世間では言うかもしれない独りよがりな描写。古い演芸場の壁のこととかですが、ああいうのを瑞々しい感性とか詩的だというなら、私には生涯分からなくても結構(^^;)


読みながら思い起こされたのが夏目漱石「こころ」とつかこうへい「蒲田行進曲」それほど似てはいないけど、言いたいことを分かってくれる人もいるはず。


一言で言って又吉の父じゃないですけど「これ、何がおもろいの?」と。まず、師匠の神谷のいうことなすことがさっぱり共感できなくて。これ実在のモデルが居るかどうかで違うかな。「龍よ目覚めよ」とか芸人論とかわけが分からなくても実在の人が放った言葉なら何がしか芯になる実在のような物があったはず。もしも完全な創作なら意味ないよなぁ・・・大学時代にこういう感じの人物はいたかな。独りよがりで、失恋を、自分の方から身を引いて譲ったと本気で言うような奴だったっけ。