Blog:Neutron Star

tma1のブログ 「試行錯誤」・・・私の好きな言葉です

「バトルフロント 戦略大作戦」シリーズ

「バトルフロント 戦略大作戦 VOL.01」

バトルフロント戦略大作戦 DVD-BOX(1)

バトルフロント戦略大作戦 DVD-BOX(1)

第二次大戦の実写フィルムを集めて27の有名な作戦、戦略を再現したもので全9巻+別巻で出ています。先月からレンタルで借り続けて全巻見終わりました。


特色のひとつが全フィルム、フルカラーだということです。もちろん、当時の軍隊つきの戦争カメラマンのフィルムはアメリカ軍の物を除けばほとんどモノクロのはずですので、デジタル処理で着色したものということになりますが、空の色などは本当に自然です。他の色も肌色を除けば違和感はあまりありません。そういえば、20年位前にモノクロ・フィルムを解析して元の色を復元する技術というのが20年以上前の新聞に載っていた気がしますが・・・勘違いかもしれません(^^;)


Amazonでも、フルカラー・フィルムがこんなに残っていた、歴史的遺産だ・・・とか勘違いしたレビュアーもいましたが、ちゃんと分かるように日本語で「デジタル処理で着色」とは明記されていないので誤解を招きやすいのかもしれません。


日本語ナレーションは大塚芳忠氏。「WOLRD AIRCRAFT」のビデオのナレーションもこの人でした。


各編正味20分程度でそれが27本ですから、フルカラーでなくても貴重だと思います。残念ながらすべての映像がその場のリアル映像かというと違うのですが・・・というのは、例えば戦闘機のドッグファイトや墜落シーン、高射砲で迎撃するシーンなどなど何本か見ると同じ映像に出会います。つまり臨場感を高めるための編集でシチュエーションにふさわしい映像を繋ぎ合わせているわけです。まぁ、仕方が無いことですが。その代わり、細切れではなくてつじつまの合う映像になっているので責められないでしょう。


ただ、厳密に資料として参考にする場合には疑ってかかる必要があります。着色にしても考証がなされていますが、もしかしたらその場に存在したはずのないものが写っている場合もあるかもしれません。例えば、シシリー島上陸作戦には米軍のこの型のハーフトラックは使われなかったはずだ・・・とか。突っ込みどころもあるかも知れません。


「バトルフロント 戦略大作戦 VOL.10」

戦略大作戦 総集編 [DVD]

戦略大作戦 総集編 [DVD]


VOL.10はVOL.09までの総集編かと思ったんですが、製作会社が違うようでほとんどの映像がVOL.09までには見られなかった映像でした。着色処理は同じDYNACS DIGITAL STUDIOというところ。


VOL.10は第二次大戦をその発端となる第一次大戦終戦処理から日本の降服まで通観できる作りになっていて非常に分かりやすかったです。歴史は個々の事跡にこだわらず通観することも大事だと思いました。VOL.01〜VOL.09にも年表がついているのでそれも参照しながら本編を見るというのも手ですが、それでもVOL.10の分かりやすさには及びません。


また、VOL.01〜VOL.09には残念ながら日本軍の作戦が全く取り上げられていません。もともと作られていないのか、日本での販売会社が何らかの意図のもとに日米の戦いを除いた形でシリーズ化したのか・・・。OP映像のタイトルには日米英独の国旗がデザインあしらわれているので、本当は存在するような気がしますが・・・?


VOL.10には太平洋戦争もちゃんと取り上げられています。ただ、ふと感じたのは死体の映像の扱いについて・・・。ソ連で「冬」に敗退したドイツ軍の死者、ドイツ軍に殺されたソ連の一般人、アウシュビッツで山積みされたユダヤ人の死体、ガダルカナルの日本軍の戦死者など結構露骨な映像がありましたが、ヒロシマ、長崎の原爆について採用された映像は、綺麗さっぱり消えうせた町並み・・・だけであって、ずる剥けになった皮膚や組織液をしたたらせて歩く子供、とかその他死者、被爆者の映像は一切無し。これでは原爆が「クリーンな兵器」というイメージを見るものに与えかねません。


実際、NHKの報道番組でも取り上げられましたが、特にアメリカ人に「ヒロシマ・長崎が伝わらない」状態になっています。それはアメリカの児童への意図的な教育方針によります。アメリカだけでなく各国民の歴史認識とそれを形作る教育方針には何らかのバイアスがかかってしまっています。


日本もしかり。特に、日本の歴史教科書はこれまでもアジア諸国から色々とクレームを受けてきましたが、昨年は非常に問題があると現場の教職員に指摘されたという某扶桑社の歴史教科書が作られただけでなく、現場の意見が無視されて力関係だけで実際に採用されてしまったという非常に恥ずかしい現実があります。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/kentei/cyuugaku.htm


検定結果というのを見ると、思想がどうのという以前に事実誤認の多い欠陥教科書という評価に見えますが、それは従来のような太平洋戦争を侵略戦争と位置づける態度を取らないという作成者、編纂者の意図の表れです。で、日本人としての愛国心、精神性を重視するというしかるべき地位の某氏の鶴の一声で某自治体の中学校に今年採用されるようです。


どっちみち偏りは避けられないのかもしれませんが、受け入れるなら隠蔽される事実がもっとも少ない偏りにしたいものです。