Blog:Neutron Star

tma1のブログ 「試行錯誤」・・・私の好きな言葉です

「鯨の絵巻」吉村昭

読了しました。動物に関わる仕事をする人間を描いた短篇集で表題作「鯨の絵巻」とハブ捕りの「光る鱗」が特に印象的でした。


「鯨の絵巻」は主人公とその父と子、三代を描いてます。かつての日本の鯨捕りは、いや昔の漁や猟は皆そうかもしれませんが、狩りは儀式に似て手順が守られて狩りに挑むものは威儀を正して参加していたのだと感じられました。


三代のうちには網取式の古式捕鯨から洋式の捕鯨砲を使った捕鯨への変遷があったり、1800年代沖合に近づく鯨が激減したのには「白鯨」にもあるように日本の近海でアメリカの捕鯨船が鯨を獲りまくっていた事情があったことが述べられています。


結局、アメリカがバッファローと同様鯨を獲りまくって激減させた挙句、保護に転じて他の国にも同調するように圧力をかけた・・・のが現在の世界的な鯨保護の始まりだったんでしょう。アメリカが日本に開国を要求したきっかけも当時の捕鯨船の補給基地としての開港を強要するためだったわけだし。つまり身勝手なんだということを自覚してるのかな、アメリカさんはw


和歌山県の太地湾について(http://www.kumano-yorimichi.com/area9/kujiranomatitaiji.html


「光る鱗」でも終戦アメリカの軍政統治下で民主化を押し付けながら沖縄・奄美の小学校は野外のテントで鉛筆一本も支給されず、見かねた代用教員の主人公が本土から密輸するしかなかった事情が語られます。


自分たちはやりたい放題やっておいて他人には理想を押し付けるのがアメリカの正義だということは、アメリカ人以外はみんなが知っていることですが(^^;)


ちなみに誤字脱字のたぐいは認められず。さすがです。もしかしたらリリース当初はいくらかあったのかもしれませんが訂正されているのでしょう。平成二年に文庫化されているようなのでその時にワープロ化(電子化)されてこれまでに訂正が行き届いたのかも。いずれにしても文藝春秋社やグーテンベルク21などは新潮社を見習って欲しいものですね。